いきなりですが次の2つの文章をまず読んでみてください。
抽象的な文章 | 具体的な文章 |
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古くから人々に愛されてきたりんごは、神話や伝説にも登場する特別な果実です。その美しい見た目と美味しさから、世界中で愛されています。 | 初夏の太陽をいっぱいに浴びたサンふじは、真っ赤に熟し、見るからに美味しそうです。皮は薄く、手で簡単に剥くことができます。 |
どちらも「りんご」をテーマにした文章ですが、上の文章は「抽象的な文章」で下の文章は今回のテーマでもある「具体的な文章」であることがわかります。後者の文章には「サンふじ」といった名称や「皮は薄く」といった様子を表した文言が使われております。
この2つの文章を実際に読んでみて、どちらの文章の方がよりりんごを頭の中で鮮明にイメージできましたか?
おそらくほとんどの方が後者だと思います。後者の文章、つまり具体的な文章というのはこのように読者の頭の中に強く印象付けさせる力があります。
なぜ具体的な文章は脳裏に焼き付きやすいのか?そこに関しては本章で深く言及するとしますが、その具体性によって人々は強くイメージを連想をし、そしてそこからさまざな行動を起こすようになります。
例えば今回であれば実際にりんごが食べたくなって、近くのスーパーに買いに行ってしまうなど、そういったことが文章によって起こり得るのです。
文章で人を動かすことができたらそれって、すごいことですよね!
逆に抽象的な文章というのは読んだ後、どこかぼんやりしたイメージを残したままで、そのせいで消化不良を起こしやすくなります。
要するに「良い文章」ではないんですね。
場合によってはそういった抽象的な文章が功を奏する場合もありますが、その場合は極めて例外です。文章に求められる役割において、ほとんどの場合で「抽象的な文章」よりも「具体的な文章」であることの方が、それは果たされるなんですね。
なのでできることなら文章を書く場合や、それを誰かに読んでもらう目的などにおいてはこの「具体的な文章」を心がける必要があるのです。
そこで今回webライティング能力検定1級を保持する筆者が今回の「具体的な文章」の書き方について例文付きで解説していきたいと思います。
具体的な文章とは?その特徴について
まずは具体的な文章とはなんぞや?という話からしていきたいと思います。
なぜ具体的な文章は頭に強く焼き付くのか?
今回具体的な文章について取り上げるわけですが、そもそもなぜ具体的な文章を書くべきなのか?具体的な文章を読むことによって人々はどのような心理状態になるのかについて初めにその目的を明らかにしておきましょう。
- 古くから人々に愛されてきたりんごは、神話や伝説にも登場する特別な果実です。その美しい見た目と美味しさから、世界中で愛されています。
- 初夏の太陽をいっぱいに浴びたサンふじは、真っ赤に熟し、見るからに美味しそうです。皮は薄く、手で簡単に剥くことができます。
こちらは先ほどもご覧いただきましたが、前者が抽象的な文章、後者が具体的な文章となっております。
具体的な文章とはつまり「詳細な文章」でもあるわけですが、例えば「古くから人々に愛されてきたりんご」と「初夏の太陽をいっぱいに浴びた真っ赤に熟したりんご」とでは、どちらがまず本当の「りんご」をイメージしやすいですか?
後者ですよね?もちろん「古くから愛されてきたりんご」という抽象的な表現にもきちんとした意味があって、今回でいうところの、りんごの歴史や概要を語る上ではそこまで悪い表現とは言えません。
しかし我々が普段よく知るりんごはというと、あの「赤くて甘く酸っぱい果汁がびっしりした」ものなのです。
その連想に深くシンクロするのが今回の具体的な文章であるわけなんですね。
要するに具体的な文章とはその正体を詳細に捉えられている文章なんですね。ですからイメージを持ちやすいのです。
仮にそれまで「りんご」を一度も見たことのない人でも「真っ赤に熟し、皮は薄く、手で簡単に剥くことができる」とあれば何やら美味しそうだとなって近くのスーパーに買いに行くかもしれません。
具体的な文章によって我々はその正体を把握できる、よってイメージができる。イメージすることができたら行動を起こすかもしれない。
これがもし初めの段階の「イメージ」ができない状態であれば、読者は行動してくれません。
物事の正体を捉えた具体的な文章には、人の頭でイメージをさせ、そのあと人を動かす力があるのです。
ですから具体的な文章は効果的だし、書けるようになりましょうということなんですね。
その中でも読者に親切なのは短く簡単な文章
ただそうはいってもそもそも人間はあまり文章は読みたくないという前提も押さえておきましょう。
具体的な文章というのは詳細に語る必要があったり、後にも解説しますが数字や引用を入れたりして通常の文章よりも長くなる傾向があります。
人間は文章など読みたくはありませんので、できればその具体的な文章もコンパクトに読みやすくしてあげるべきなんですね。
いくら長々と具体的にりんごについて語った文章があったとしてもそれは読まれなければ意味がないのです。
例えば「りんごの種は黒くて2mmくらいの大きさをしています。」そんな文章を書く必要は果たしてあるのか?ということです。
具体的な文章は長ければいいというわけではなく、目的に応じて採用する材料も厳選する必要があります。
それでは以下より具体的な文章とはどのようなものなのか?について事例を交えてみていきたいと思います。
- 主題、テーマがはっきりしている
- 事例が入っている
- 数字やデータが入っている
- 場所や時間が入っている
- 感覚的な表現は用いない、誰もが共通して理解できる表現
- 文章を論理的に分かりやすい
主題、テーマがはっきりしている
まず具体的な文章には基本的にテーマが備わっています。
例えば次の2つの文ではどちらが具体的だと思いますか?
- この文章では、色々なことについて話します。私たちの生活には様々な側面があり、どれも重要です。人々は日常生活で多くの課題に直面しますが、それに対処する方法もいろいろです。
- この文章では、健康な食生活が体調とメンタルヘルスに与える影響について説明します。その中で毎日の食事に新鮮な野菜や果物を取り入れることで、どのようにエネルギーレベルが向上し、ストレスが軽減されるかを詳しく見ていきます。また、健康的な食事の具体的なレシピや、実践するための簡単な方法も紹介します。
前者においてはその文章で何を言いたいのか、意図がまるでわかりません。
抽象的な文章となってしまっているのです。
一方で後者に置いては語るテーマを「食事」に据え、実際にその「食事」に関する情報が多く備わっているのがわかります。
読みたくなる文章は明らかに後者の文章です。仮に食事に興味がなくても確実に自分の為になるのは後者だと誰もがわかるからですね。
このように具体的な文章にはまず「テーマ」が備わっています。
一方で「テーマ」を欠いてしまうと抽象的な文章になってしまい、どこかぼんやりしてしまって間の抜けた文章になってしまうのです。
そうすると読まれることもなくなってしまうんですね。
事例が入っている
具体的な文章には例文、つまり「例え」もうまく組みこれています。
そこでここでも例文を用意したのでみてみましょう。
- 健康的な食事をすることは大切です。それにより、体調が良くなり、エネルギーが増えます。また、ストレスが軽減されることもあります。
- 健康的な食事をすることは大切です。例えば、毎日朝食にフルーツとオートミールを取り入れることで、ビタミンや食物繊維を効率よく摂取できます。これにより、消化機能が改善され、1日を通してエネルギーレベルが安定します。また、週に2回は脂肪分の少ない魚を食べると、オメガ3脂肪酸の摂取量が増え、ストレスの軽減や心臓の健康に良い影響を与えます。
後者の文章には「フルーツ」と「オートミール」といった実際の食品名が例文と一緒に紹介されており、それによって説得力がましているのがわかります。
例文には読者に「想起」を促す力があります。また実際に自分も知っている商品と関連した例文を読むことによって、さらに説得力のある文章になります。
これが要するに読者にとって具体的な体験であり、そのような体験をさせるのが「具体的な文章」であるというわけなんですね。
数字やデータが入っている
また数字やデータも用いていくことでより具体性がます文章となります。
- 彼の詩は多くの人から支持を受けています。
- 彼の書いたその詩は、100人以上の読者から5つ星評価を受けています。
両方の文章を比較してみたとき、どちらの方が説得力のある文章だと言えそうですか?
後者では実際どれくらい評価されているのか?についてを数字で説明しています。
この数字に人は非常に左右されるんですね。例えば先ほどの文章で言えば、5つ星評価がついているとしれば好印象を受けたり、2つの星評価であれば悪印象を受けたり。
非常にこの数字に左右されやすい傾向があり、人を動かす上ではこの数字が重要な要素となります。
人は文章を読んだだけではそう簡単には動きません。そこには確かな根拠が必要となるのです。それをこの数字やデータで補うのです。
そしてそのような文章を具体的な文章とも呼ぶことができるかと思いますので、人を動かす文章を書きたい場合はこの数字やデータをたくさん使うようにしましょう。
場所や時間が入っている
あるいは同じ容量で場所や時間が入っている文章も具体性と説得力が増します。
- 昨日、友人と会った。
- 昨日の午後、東京の渋谷駅前で待ち合わせをして、そのあと道玄坂にある居酒屋でお酒と美味しい食事を食べた。
これはかなり大袈裟な例ですが、つまりそういうことです。
前者の文章を読めば友人と会ったということはわかりますが、それ以上のことはわかりません。そのような文章を読んだだけでは読者は何も感じないんですね。
しかし後者の文章では場所や時間、そういったことが説明されており、それを読んだ読者はそこからさまざまな思いを巡らせるようになります。
例えば「午後の渋谷で待ち合わせなんてしばらくやっていないなぁ、楽しそう!」とか、「渋谷の待ち合わせは人が多くて大変そう」とか、「道玄坂の居酒屋なんてオシャレ!私もいってみたい!」とか。
文章に場所や時間を補足するだけで、このような思いにさせることができるようになるのです。
それが知っている土地であれば親近感を感じさせ、そこから連想ゲームに入らせたり、仮に知らない土地であっても逆にどういった土地なのか?という疑問を持たせることができたり。
この場所や時間というのも具体的な文章を書く上では重要な要素となってきます。
感覚的な表現は用いない、誰もが共通して理解できる表現
最後の具体的な文章を書くうえで守りたい鉄則事項をお伝えします。
それは感覚的な表現は用いない、誰もが共通して理解できる表現を用いるということです。
例えば、
- あそこの家の長男はいつも遅くに起きている。俺は大嫌いだ。
↑これは非常に感覚的な文章と言えます。個人の主観による文章なんですね。
それになぜ嫌いなのか?その原因についても明確に示しておりませんし、遅くに起きているから嫌いというが、もしかしたらその人は夜勤の方で夜にしっかりと働いている方かもしれません。
また「あそこの家」というが、隣の家のことなのか、テレビで紹介されている家の人のことなのか、どの世界線にいる人のことなのかもわかりません。
いずれにせよ感覚的な話となっており、言い換えればただの悪口でただの自己満足の文章となっております。
しかし、
- テレビで紹介されていたとある家庭の長男がいる。その者は仕事もせず毎日ギャンブルばかり行っている。親が必死に働いてためたお金、そのお金を親からせしめて、全てギャンブルに投下している。毎日遅くに起きてきて腹立たしいにも程がある。
この文章においては誰もが理解できるような平易な表現を用い、個人の感覚を排除することに努めております。
このように個人の感覚的な表現方誰もが理解できるような表現にすることによって、その文章には根拠がもたらされ、あるいは誰もが共感してくれる文章になるかもしれません。
具体的な文章においては誰もが理解できる文章を心がける必要があります。
場合によっては理解できない、個人の主観的な文章になってはいけないんですね。
文章を論理的に分かりやすい
論理的とは意味がきちんとまかり通っているということです。
例えば、昨日は雨が降ったので、今日も必ず雨が降るでしょう。
これは論理が破綻している文章だと言えます。
昨日は雨で、だから今日も雨とは限らないからですね。これでは論理が破綻しているし、言い切ることをしてはいけません。
これをきちんと論理の通った文章にしてあげると以下のようになります。
昨日は雨が降った。現在は梅雨前線が停滞しており、今日ももしかしたら雨が降るかもしれない。
これであれば、論理は通ります。誰もが納得して読み進めることができるはずです。
またこのように論理的な文章を心がければ、文章は必然的に具体性がまし、具体的な文章にもなるということです。
具体的な文章を書く際はこの論理性が担保されているかを見てみると良いでしょう。
論理的な文章を書くトレーニング方法
それでは最後に論理的な文章を書くトレーニング方法についてお伝えします。
- なぜ?とそれで何が言いたいの(要するに)?を繰り返す
- ゼロベース、自分は何も知識を持っていないと仮定して考える
- 万人が聞いてわかるような説明になっているかを前提にする
なぜ?とそれで何が言いたいの(要するに)?を繰り返す
論理的思考力を身につけるためには、一つの問題を用意し、その問題に対し「なぜ?」と「それで何が言いたいの?」の質疑応答を繰り返すことです。
例えば先ほどの「海の温暖化と海面の上昇が問題」に関して、
なぜ?
それで何が言いたいの(要するに)?
なぜ?
それで何が言いたいの(要するに)?
なぜ?
それで何が言いたいの(要するに)?
結論
と、こんな感じですね。
このように「なぜ?」と「それで何が言いたいの(要するに)?」の質疑応答だけで結論まで導くことができ、その一連の流れにおいても原因や改善点が踏まえられた、濃密な仕組みを構造することができます。
ゼロベース、自分は何も知識を持っていないと仮定して考える
また何か考えようとするときに、自分はまだ何も知らない人間だと仮定しながら考えていくことで論理的思考ができたりします。
ゼロベースでものを考えるということですね。
例えば「海の温暖化と海面の上昇が問題」について考えるとき、
- 海って何?
- 温暖化って何?
- 海面の上昇って何?
- 温暖化の何が問題なの?
- 海面の上昇の何が問題なの?
- なんで地球全体が熱くなるといけないの?
このように何もない状態から物事を考えていくことで、まずわからないことをなくすことができ、そのトピックに関する性質がわかるようになります。
わからないことがあった際はGoogleなどの検索エンジンで調べていけば必ずわかります。
そしてその性質が分かった時、物事の関連性や原因、改善点も洗い出せるようになります。
あとはそれを組み合わせていくことで濃密な仕組みを構築できるようになります。
それが論理的思考です。
論理的な思考を行うためにはまずはそのトピックがどういったものなのか?そのトピックの性質を明らかにすることが重要です。
往々にして論理的な思考ができないのは、そのトピックにまつわる情報が少ないからなのです。
そこでまずは自分が原点に立ち返り、情報を集め、一つずつそのトピックを解体すること、改めてそれがなんなのかを明らかにしていくことが重要です。
万人が聞いてわかるような説明になっているかを前提にする
その際、自分で作った論理的な仕組が、多くの人が目にし、耳にし理解できるようになっているかを確認することも重要です。
論理的な説明はわかりやすいことも重要だし、誰にでもわかるように説明することを心がけることで、それは確実に論理的な説明になっていきます。
なのでその説明において誰でも理解できるようなものであれば、それは確実に論理的であるという裏付けにもなるというわけです。
万人が聞いて全員が全員理解できるのはもちろん、全員が同じ解釈ができることを目指しアプローチしていくと良いでしょう。
同じ文章を読んでAさんは理解できた、Bさんは理解できない。このような文章であってはいけないということですね。
そこにこだわり、万人に理解してもらえるような文章を常に心がけることで、確実に論理的な文章は書けるようになります。
具体的な文章 例文に関する疑問
- 分かりやすい文章の書き方は?
-
- 一文一義を意識する
- 主語と述語を対応させる
- 係り受けを近づける(主語・述語/修飾語・被修飾語を近づける)
- 結論を先に書く
- 読点でわかりやすくする
- 同じ語句を繰り返さない
- あいまいな表現をしない
- 専門用語の使い方に注意する
- ロジカルな文章とはどういう文章ですか?
-
論理の破綻していない、万人が同じ理解ができる文章のことです。
- 文章を上手に書くコツは?
-
語彙を備えること、そのトピックにまつわる知識を身につけること、まずはこの二つに注力してみてください。
人は具体的な文章を読んで感動します。ぜひ具体的な文章を書けるようになってください!
文章というのは具体的であればあるだけ、人に共感を覚えさせます。
そしてその共感があれば人は行動を起こすのです。そのため文章執筆において具体的な文章を書けるスキルは重宝されます。
そのためにもまずは具体的な文章とはどういうものなのか、ということを知ることが必要です。
その要素がわかればあとはその要素を文章内に入れていく、そのアプローチをしていけば具体的な文章にすることが可能です。
そこについては本記事で語ってきたつもりです。
あとはたくさんの文献を読んだり、自分が読みやすいと感じた文章を覚えておき、メモにとりそれの文章がどのような構成になっているのか分解してみることもおすすめです。
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